甲子園を見ていると、幼少期を思い出す。
俺は4歳から8歳までの間、猿に育てられた。
実際には、地元が田舎すぎたために友達がおらず、猿と遊んでいたということではあるのだが。
周りに人間の友達がおらず、田舎のため娯楽もない中、偶然テレビで見た野球に憧れ、猿と野球を試みた。
岩石を削りバットを作り、猿に石を投げさせた。
猿も俺も楽しい日々を過ごしていた。木々たちも暖かく見守ってくれていたことを覚えている。
俺は来る日も来る日も岩石を削って作ったバットで猿の投げる石ころを打ち返した。
岩石バットは当然だが、めちゃくちゃに重い。ある夏の日、俺は隆々とした腕を振り回す、一匹の野生の猿であった。
デメリットもあった。筋力の代わりに言語能力が著しく低下したのである。見兼ねた父親は俺の外出を禁止したが、何を言っているのか分からなかったので結局普段通り猿と遊んでいた。
両親も最終的に諦めたのか、逆に都市部で野球をさせるようになった。
俺はリトルリーグでエースで四番であった。全力で放ったストレートはマッハ6を優に超えていた。
それでも俺は彼を打ち取れなかった。
彼は天才だった。
___その天才は、名を大谷翔平といった。